与えられた環境に気づくこと

40数年前に撮影されたビデオが見つかり、ある方の協力により古い映像をDVDで観ることが出来ました。

「神人」というタイトル。

村出身で県外に出て行った方々によって、40数年前に撮影されたそうです。

村の人々の普段の様子や豊年祭の様子、集落の風景。

クバの御嶽の祭祀が映されていました。

 

 

当時クバの御嶽の祭祀を執り行っていたのは祖母で若かりし頃のまつおばぁが登場し、映像の中のまつおばぁの姿に感動でウルウルでした。

 

 

ノロ、トモノカネを先頭に20名ほどの神衣装を着たカミンチュ。

その後ろに集落の女性の方々。後列には集落の男性。

総勢80名程がクバの御嶽に向かい整列している姿はとても神聖で、映像からも厳かな雰囲気が伝わってきました。

 

 

 

クバの御嶽は琉球開闢七御嶽のひとつで今帰仁城址のすぐ側にあり、アマミキヨが2番目に作ったとされる御嶽です。

旧暦の9月15日に「ウプウガン」が行われます。

「ウミャー」というクバの御嶽の麓にある庭があり一般の方はそこまでしか入れません。そこから山を登った頂上にある「イビ」はノロ、トモノカネのカミンチュしか入ることは出来ません。

もちろん、男子禁制です。

 

 

3年前でしょうか。

姉妹でクバの御嶽に登ったのですが、ロープを頼りに必死に登りやっと辿り着いた感じでした。翌日は筋肉痛で大変だったのを思い出します。

 

神人の撮影当時、祖母は60を超えています。トモノカネも50代後半だったと思います。

ロープもなく岩だらけの急な斜面。そこを神衣装に島ぞうりで駆け登る祖母の姿。

神衣装の裾を持ち軽々しくスイスイと登る祖母。もともと足が悪かったのですが映像の中の祖母は私の知っている祖母とは違いました。

ノロとしての使命を果たすという強い意志を、山を登る後ろ姿に感じました。

 

 

祖母よりずっと若い私達が「キツイ、キツイ」と言いながら登っていたのを思い出すと情けなくなりました。

 

 

 

イビにてノロが祭祀を執り行い、ノロの合図で下で待ち受けている集落の人々が一斉に手を合わせ祈ります。

イビからノロが降りてくると今度はウミャーにて神々様に感謝の祈りを捧げていました。

 

 

ノロの合図で一斉に手を合わせ祈る姿はとても神聖で、神々様に対する畏怖の念が伝わってきました。

本来の祈りの姿を見せてもらった気がします。

 

 

祭祀を終えると皆んなで輪を囲み、三線の音に合わせカチャーシーを踊っていました。

お祝いに欠かせないカチャーシーです。身体中で喜びを表しています。

無事に拝みを終え、神々様の前で踊るカチャーシーにみな笑顔が溢れていました。

 

 

ノロ制度が廃止になっても祈りをなくす事はありませんでした。

ノロをはじめ集落の人々で守り続けた祈り。

貧しい時代を生き抜いた先輩方は神々様のお陰で生かされている事を知っていたので、感謝を忘れる事はなかったのでしょう。

 

 

十分に与えられた時代を生きているはずなのに、神々様に与えて欲しいと求め続けるのは何故?

既に十分である、神々様は十分に与えて下さっていると気づく事が大事だと、先輩方の笑顔を見て感じました。

 

 

今、このタイミングでビデオに出会えたのは大きな意味がありました。