ノロ殿内の敷地内にある桜です。
何故か今の時期に花が咲きます。
満開になる事はありませんが綺麗なピンク色の花がちらほら咲きます。
沖縄の桜は1月末に満開となりますが、ノロ殿内の桜は1月と9月から10月にかけて開花します。
年に2度、綺麗な花を楽しませてくれる不思議な桜です。
どんなに古き良き風習であっても伝統であっても、時代が変わっていく中で存続し続けるというのは難しい事です。
老舗和菓子店の跡継ぎが時代にあった和菓子を開発しようと試みるが、長年に渡って伝統和菓子を作り続けてきた職人は変化が受け入れられず。
職人を説得するために奮闘している跡継ぎの女性がテレビで取り上げられていました。
跡継ぎが今までとは違った発想をもとに作り上げたお菓子がヒットし、今まで以上の売り上げに。
新しい形に変えたお菓子は、今の時代にあっていたのです。
職人も驚きの喜びでした。
形を変えずに残せるならそれに越した事はありませんが。
残したいと望むなら、時代に合わせて変化していくしかないのですね。
ノロ殿内でもノロの継承をとても悩んでいました。
ノロ制度が廃止になってもノロ殿内をなくす事は出来ませんでした。
祖母は娘にノロを継がせなくてはいけない事をとても悩んだそう。
今から60年余り前の話です。
ノロ制度の廃止から長い年月が経っていたにも関わらずです。
ノロ殿内の存続もノロの継承も、ノロ殿内で考えなければいけません。
守り続けるための判断を家族で考えるには荷が重かったと思います。
祖母は首里の儀保大あむしられに相談に行ったそうです。
大あむしられとは聞得大君の下に位置する高級神女です。
琉球を3分割した間切・島を管轄していました。
祖母が相談に行った時には儀保大あむしられも廃止となっていますが、ノロ殿内と同様受け継いだ方がいたのですね。
相談する相手がいた事は幸いでした。
「今の時代、娘を嫁がせず家に閉じ込めておくとその家は繁栄しない。娘は嫁がせて嫁である母親がノロを継いだらいい」
とのアドバイスを受けました。
大あむしられに相談した事で祖母は安心し、娘の代わりにノロを継ぐ事にしました。
ノロ殿内に嫁いだ嫁が娘の代理としてノロを継ぐ、代理ノロという形に変わりました。
現在は母が私たちの代わりに代理ノロを務めています。
祖母が代理ノロとしてノロを受け継ぐ形に変えたお陰でノロは途絶える事なく、ノロ殿内は今でも存続しています。
必要なものは形を変えてでも残るそう。
変化を恐れてはいけないのです。